気になるニュース 701
「本当に愚かとしかいいようがない」・・・
引用書き起こし開始。
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*再稼働…問われる危機感 高村薫さんに聞く「原発と日本」
間もなく4年を迎える東京電力福島第一原発事故。2月には放射性物質を含んだ汚染水の大量流出が発覚し、事故収束の難しさと、問題を10カ月間隠してきた東電の無責任体質が浮き彫りになった。安倍晋三政権が再稼働路線をひた走る中、原発とどう向き合うかがあらためて問われるニッポン。社会派作家の高村薫さん(62)に聞いた。(高橋雅人)
◆福島の悲劇 風化進んでる
──再稼働への動きが加速している。
「国民の間で、福島原発事故の風化が進んでいることがそれを許しているのではないか。本来、国民全体で悲しむべき事故が、福島限定の悲劇にとどまっている。私たちの危機意識が低いからだ。報道で知るだけでは想像力を働かそうにも限界がある。事故現場に一度でも立てば、誰でも事の重大さに気づくはずなのに、それができていない」
──再稼働一、二番手とされる関西電力高浜原発3、4号機(福井県)は原発テロを題材にした小説「神の火」(1991年)の舞台のモデルだ。
「あの作品はチェルノブイリ原発事故(86年)と湾岸戦争(91年)がきっかけだった。関西生まれの私にとって福井の原発銀座は身近。そこへミサイルが飛んできたら西日本が全滅すると思い、背筋が寒くなった。北東アジアの国際情勢が平和とは言えない中で日本が原発を動かすのは人質を取られているようなものだ。あの時初めて日本に原発はあり得ないと思い、世に問うことにした」
──福島の場合、テロではなく地震だった。
「90年代、テロや戦争で原発が襲われたら日本が壊滅するというのは想像できたが、地震までは思いつかなかった。日本の科学者たちもチェルノブイリ後に『日本の原子炉は多重防護システムで大丈夫だ』と説明していた。ところが、福島の事故では(水没した)非常用電源が本来あってはいけない場所に設置されるなど初歩的な不注意があった。チェルノブイリの時の説明はうそだった」
◆「秘密主義」で国民置き去り
──原子力には隠蔽(いんぺい)体質があると。
「私の世代は原子力の火は希望や明るい未来、輝かしい科学技術の象徴みたいな受け止め方をして育ってきた。平和利用が一概に間違っていたとは思わないが、一番欠けていたのは情報公開。不透明で、秘密主義だった。その曖昧さを国民は受け入れてきた。2月に発覚した福島の汚染水流出で東電が公表しなかったのも国民が許してくれると思ったから。企業の楽観論に政治が乗っかり、国民は置き去りにされている」
「東日本大震災後、日本人は自分たちが築いた文明に懐疑的になり、立ち止まって考えると思った。ところが全然違う。一体、日本人は何人死んだら立ち止まるのか。1万5000人余りでは足りないのだろうか。だいたい太平洋戦争で300万人も亡くなったというのに、今の政治家は懲りていないというか、戦争への反省がない。本当に愚かとしかいいようがない」
──福島の事故は作家人生に影響を与えたか。
「自分も含め人間は愚かだと思うはんめん半面、よりよく生きる意思を持てると思っている。私は原発を動かしたくないので絶対節電するという意思を持って生活している。価値観は多様であっていいと思うけれど、最終的に人間の生き方はそれほど違わない。うそをつかないとか、人をだまさないとか。人が住めなくなるようなところをつくっちゃいけないというのも同じ」
「これまで経済とか科学技術とかに目を向けてきたが、今はもう生きているものが大切に思えてしょうがない。私たちは阪神を含め二度の大震災を経験し、生と死が隣り合わせだと感じている。人間はたくさんの人の死と向き合った時、不思議なことに生への意思も芽生える。土をテーマに作品を書いているが、それは自分の体が立っていると実感できるから。チェルノブイリの汚染地で最も早く回復したのは草木だった。だから、命を考えると、やっぱり土が大事だと思ってしまう」
[高村薫(たかむら・かおる)]
1953年、大阪府生まれ。国際基督教大卒。商社勤務を経て90年、「黄金を抱いて翔べ」でデビュー。93年に「マークスの山」で直木賞受賞。代表作に「神の火」のほか「レディ・ジョーカー」「新リア王」などがある。現在、月刊誌に「土の記」を連載中。大阪府在住。
2015年3月9日 東京新聞:核心
http://www.tokyo-np.co.jp/article/kakushin/list/CK2015030902000131.html
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