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2014年3月 6日 (木)

気になるニュース 478

 

・「帰還に向けた放射線リスクコミュニケーションに関する施策パッケージ」概要本文
「放射線リスクに関する基礎的情報」  
引用書き起こし開始。

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*国が本腰入れて「安心神話」をスリコミ 復興庁の施策パッケージ


東京電力福島第一原発から20キロ圏内の旧警戒区域の一部が今春、避難指示を解除される。復興庁は先月、帰還を考える住民たちの不安を軽くする「放射線リスクコミュニケーション(リスコミ)に関する施策パッケージ」を発表した。11省庁、委員会の合作だが、内容は安全神話ならぬ「安心神話」。リスコミというより、スリコミではないのか。(出田阿生、榊原崇仁)


◆帰還ありきの施策集

「政府がやろうとしているリスクコミュニケーションは本来あるべき姿とは程遠い。早期帰還を進めるため、『健康影響なし』という考え方を押しつけようとしているだけだ」。倫理を扱う宗教学者の立場から原発問題に向き合う上智大の島薗進教授はそう述べた。

この間、政府は住民帰還を急いできた。201112月には低線量被ばくのリスクが明確でないにもかかわらず、「年間積算放射線量20ミリシーベルト以下」を避難指示解除条件と決め、避難指示区域を帰還困難区域など3区域に再編成した。

先月には、旧警戒区域では初めて41日に田村市都路地区への避難指示を解除すると決めた。

解除と併せ、政府が進めるのがリスクコミュニケーションだ。14年度予算案で関連事業費を計上。復興庁は環境省など11省庁、委員会の施策集「帰還に向けた放射線リスクコミュニケーションに関する施策パッケージ」をまとめた。

施策集は次のような点を強調している。

住民は帰還後、自分で身の回りの線量を測ることになっている。その際、数値の理解の促進や、健康不安の疑問を解消するため、行政は保健師らによる「相談員」を地域に配置する。

さらに専門家を交えた少人数の座談会を開き、住民同士が不安を共有して心の負担を軽くさせる。相談員らは政府作成の冊子「放射線リスクに関する基礎的情報」を基に、住民たちに助言するという。

こうした施策は「リスコミのあるべき姿」からかけ離れていると、島薗教授は指摘する。リスクコミュニケーションとは、生活を脅かす状況について、住民ら当事者たちがさまざまな視点から意見を交わす中で、その深刻さなどを正確に捉え、適切な対処法などを導き出すことを意味する。

「放射線の健康影響については、低線量被ばくの影響がどうか、その対策として何が必要か、が重要な部分だ。リスコミの観点では本来、こうした事柄について、議論を尽くさないといけない。しかし、政府は一方的に『健康影響はない』と結論付けている」

低線量被ばくを軽視する「安心神話」は、相談員らの参考書となる「放射線リスクに関する基礎的情報」に貫かれている。島薗教授は「相談員らと意見交換するといっても、『この数値なら大丈夫』 『健康影響はない』という答えがもう出されている」と語る。

島薗教授は、この相談員の配置自体にも疑問を呈す。「地域にいる保健師や看護師らを動員し、『健康影響なし』という考え方をすみずみまで行き渡らせようとしていないか。相談員というよりも、思想指導員だ。これではリスコミではなくスリコミとやゆされても仕方がない」


◆「安心神話」のスリコミ

次に「放射線リスクに関する基礎的情報」という冊子の中身をみてみる。助言者一覧をみると、福島原発事故後に住民に「安心・安全」を強調してきた山下俊一・福島県立医科大副学長や長滝重信・長崎大名誉教授らの名前が並ぶ。

内容について、国際環境団体「FoE Japan」の満田夏花理事は「住民を安心させて帰還を進める意図で、都合の良い情報だけを集めている。帰還が前提なので、避難を続ける住民への支援は全く考慮していない」と話す。

例えば、世界保健機関(WHO)が132月に公表した福島原発事故の報告書について、「被ばく線量が最も高かった地域の外側では、福島県においてもがんの罹患(りかん)のリスクの増加は小さく」と記述。報告書にあった「一部の乳児は甲状腺がんや白血病などのリスクが数%から約70%増える」という推計は無視した。

まだ正式に発表されていない国連科学委員会の報告書案を取り上げて「将来にも被ばくによる健康影響の増加が認められる見込みはない」と記した。「この評価はデータの信頼性が薄いと、専門家から批判されている」(満田さん)

チェルノブイリ事故については「甲状腺がんで15人が死に至ったが、それ以外の周辺住民の被ばくによる健康影響は説得力のある証拠はない」とする国連科学委の08年報告書を参考資料に示している。この報告書はベラルーシやウクライナの政府が「当事国の報告を無視するか解釈をゆがめ、被害を過小評価している」と抗議した代物だ。

医療による被ばくや飛行機の機上で宇宙から受ける被ばくも記してある。京都大原子炉実験所の小出裕章助教は「こうした被ばくは各自が選べる事柄で、利益もある。だが政府が進めようとしている住民帰還は、住民が東電や国から事故に起因する被ばくを押しつけられている。幼児までもが放射線の専門職と同程度の被ばくを強いられるのは許されない」と断言する。

帰還推奨には、チェルノブイリ事故後にベラルーシで始まった「エートス・プロジェクト」の考え方が影響を与えている。汚染地域の住民自身が身近な放射線を計測して、被ばくを減らそうという試みだった。

主導者はフランス人経済学者のジャック・ロシャール氏。仏の電力公社や原子力庁、原子力企業アレバ社などが関係する「放射線防護評価センター」所長で、国際放射線防護委員会(ICRP)の副委員長も務める。ICRPの有志が福島県内で開いた住民との対話集会で司会をするなど、福島との関わりも深い。

フランス人社会学者のセシル・アサヌマ=ブリスさんは「エートスは『汚染地域から移住しない』ことを前提にしている。健康被害が出ることを分かっていても、利益がリスクを上回ればいいという考え方が基本だ」と説明する。

福島市で2人の子どもと暮らす主婦(49)は「福島県立医科大をはじめ、行政や医者たちは『放射能を怖がるストレスの方が体に良くない』と言う。だけど、今も原発から放射性物質が出続けている。いくら安全、安心だといわれても信じられない」と不安がる。

環境省は都路地区と川内村にまたがる東電の敷地に除染廃棄物の焼却施設を計画中だ。「地元に帰れといいながら、不安要素になる焼却炉をつくろうとしている。住民をバカにしてるようにしか思えない」

冒頭の島薗教授は政府の意図をこう推測する。

「スリコミで健康影響への不満を封じ込め、早期帰還が実現すれば、東電の賠償額も減らせる。事故の影響を小さく見せれば、初動対応が遅れた責任をごまかし、他の原発の再稼動も進めやすくなる。こんな計略を許してはいけない」


[デスクメモ]
ルワンダ難民のキャンプでは毎朝、100以上の遺体が並んだ。最初は驚いたが、すぐに慣れた。異常を異常と感知する感性はもろい。福島原発事故から3年。毒水の井戸から毎日、水があふれる。でも、誰も驚かなくなった。理性が洗脳に侵されつつある。私たちは変えられている。それを自覚できているのか。(牧)



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201436日 東京新聞:こちら特報部
http://www.tokyo-np.co.jp/article/tokuho/list/CK2014030602000153.html

 

 

 

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