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北電てば・・・
引用書き起こし開始。
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*節電の冬 市民は本気 新日本原発ゼロ紀行 泊編
北海道は今、2度目の「原発ゼロの冬」だ。暖房需要が伸びる冬に電力消費がピークを迎える道内では、数値目標付きの節電要請期間中だが、泊原発(泊村)の再稼働をもくろむ北海道電力の中途半端な姿勢よりは、市民たちの方が、よほど節電や再生可能エネルギーの普及に熱心だ。エネルギーを自給する地域循環型社会への取り組みも始まっている。(篠ケ瀬祐司)
◆創意工夫あふれる
札幌市中心部の大通公園に青白い光の大河が流れ、オレンジや黄色に電飾されたオブジェがきらめく。カップルらが何度も歓声を上げる。昨年末まで初冬の大通公園を彩ったイルミネーションは、再生可能エネルギーのバイオディーゼル燃料(BDF)による自家発電でまかなわれた。
BDFは、家庭や企業の廃食油から精製した燃料を軽油代わりに使う。2011年からBDFを一部導入し、12年から公園全体に拡大した。事務局は「東日本大震災後は休止も検討したが、冬こそ明るくしたいと続行した。市民の理解を得るにはBDF導入は必然だった」と話す。
政府と北電は3月7日までの平日、厳冬だった10年度比6%以上の節電を求めている。エネルギーに関する市民の意識や生活スタイルも変わりつつある。
札幌市の竹原鉄工所は12年夏から、24時間だった溶接ロボットの運転を原則夜間のみにした。冬季は駐車場の雪をとかすロードヒーティングを止め、工場屋根の融雪用ヒーターの電源も極力切る。電力使用量は事務所で約半減、工場で2割以上減った。
「北電が計画している液化天然ガス(LNG)火力発電所が稼働すれば、泊原発が止まっても何とかなると思うようになった」と社長の竹原巌さん(68)。北電は小樽市と石狩市にまたがる地域に、LNGによる石狩湾新港発電所の建設を計画。合計出力約170万キロワットで、19年からの営業運転を目指している。
道内は林業や酪農が盛んだ。コープさっぽろのエネルギー関連会社・エネコープは、12年末に七飯町にバイオガス施設を設けた。コープ店舗で出る食品廃棄物や家畜のふん尿などをメタン発酵させ、発生したガスで発電する。13年春には、道内で最も日射量が多い帯広市でメガソーラー発電所を建設した。
木質ペレット燃料の浸透にも力を入れる。樹皮やおがくずなどを砕き、棒状にして燃料にする。社長の野坂卓見さん(68)は、自宅でもペレットストーブを使い、気づいた点を商品改良に役立てている。
エネルギー自給率アップの取り組みが全国に広がることを夢見る。「全国展開する大手小売店チェーンや国が、エネルギーや環境問題にどう取り組むかが問われる時期にきているのではないでしょうか」
◆自然エネ100%へ工程表
工程表を作ってエネルギー自給を高めようとの試みもある。「北海道の地産地消エネルギーの最大限の活用と自然エネルギーへのシフト」を掲げて道内56のNGO、NPOらが結集。「再生可能エネルギー100%へのロードマップ」をまとめた。
2020年まではまず節電を進める。30年までは節電と風力や太陽光発電の導入を並行させ、使用電力の約8割を再生可能エネルギーでまかなうことを目指す。50年までには再生可能エネルギーだけで北海道の電力需要の倍量発電し、余剰分を他地域に供給しようというのだ。
北海道は01年に「省エネルギー・新エネルギー促進条例」を制定した。「脱原発の視点に立ち、自律的に確保できる新エネルギーの利用を拡大する責務がある。持続的発展が可能な循環型の社会システムをつくりあげる」と宣言している。工程表をまとめたグループは、あえて「アンチ原発」を主張せず、この条例の精神に沿って行政側との連携を図ろうとしている。
調整役のNPO法人「北海道市民環境ネットワーク」常務理事の宮本尚さん(54)は、地域循環型社会への意気込みをこう語る。「酪農や林業が盛んな地域ではバイオマス、遊休地が多いなら太陽光発電と、地元の特性を生かせばエネルギー自給は可能だ」
ただし、道のりは険しい。地域独占企業の北電が、再生可能エネルギー買い取りを制限しているからだ。
北電が発表した買い取り量は、500キロワット以上の大規模太陽光発電所から70万キロワット、風力は56万キロワットまで。大型太陽光発電は13年12月20日現在、379件、計約183万キロワットの購入申し込みがある。うち6割以上は発電しても買い取ってもらえない。
泊原発停止後は、火力発電量の増加でしのいでいる。老朽化した火力発電施設は故障も多い。再生可能エネルギー買い取り量を増やす好機と思えるが、送電線の容量に限界がある上、「天候で出力が変わる太陽光や風力発電の割合が増えると、火力などの調整能力を超えて安定供給できなくなる」(北電広報)との理屈を持ち出す。
しかし、北電の原発優先姿勢こそが、再生可能エネルギー活用の壁になっているとの指摘もある。北電関係者は「再生可能エネルギーの多くは、契約から20年間買い取らなければならない。われわれは泊原発の再稼働を前提にしている」と明かす。原発を動かすのだから再生可能エネルギーの割合は増やしたくないとの思いがにじむ。
日本海から強い風が吹く中、泊原発構内で防潮堤の工事が進められている。泊原発1~3号機は、12年5月からすべて停止している。北電は再稼働を急ぐが、13年7月に始まった安全審査では、原子力規制委員会から追加の資料提出などを求められ、再稼働時期は見通せない。
泊原発廃炉を求める訴訟を起こした小野有五・北星学園大学教授(65)は、原発の危険性と、発想の転換の必要性を強調する。
「事故があれば西風に乗って放射性物質が道内に広がり、産業は大打撃を受けて住む場所も失われる。LNG発電の運転開始を早めて再生可能エネルギーの割合を高めていけば、北海道は原発なしでやっていける。地域循環型の社会を実現すれば地域が自立し、雇用も生まれるはずだ」
[デスクメモ]
自然エネルギーの話になると、元北海道大助教の大友詔雄さんの言葉を思い出す。原子力の専門家でありながら、原発に反対する不屈の学者だ。「効率と利潤さえよければ危険なものでも使う社会だから、有害で危険な原発を選択した。この社会を改めない限り、本当に自然エネルギーを使うことにはならない」(圭)
2014年1月4日 東京新聞:こちら特報部
http://www.tokyo-np.co.jp/article/tokuho/list/CK2014010402000145.html
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