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2013年8月18日 (日)

気になるニュース 185

 

Web記事には見当たらなかったので・・・
引用書き起こし開始。 

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*時代を読む:麻生発言をめぐって/佐々木毅 


8月は日本では歴史を回顧し、未来に思いを致す鎮魂の月である。広島や長崎への原爆投下、その後のポツダム宣言受諾の月である。メディアではこれらをめぐる証言やドキュメントがたくさん流される。歴史をめぐる発言や出来事が目につく月でもある。政権が靖国神社参拝問題をどう取り扱うかは恒例のテーマになっている。 

日本の官房長官が「安倍内閣としてはナチス政権を肯定的にとらえることは断じてない」と釈明せざるを得ない事態が起こった。ナチスが滅亡して68年たった今、このような釈明会見をしなければならない政府が他のどこにあろうか。異常な事態である。 

発端は先月29日の都内のシンポジウムで麻生太郎副総理兼財務相が憲法改正についてナチスを引き合いに出し「手口を学んだらどうか」と発言したことにあった。海外や与野党からの批判もあって、麻生氏は早速81日に発言を撤回した。首相周辺の意向を受けての早期撤回だったと報道されている。何かといえば歴史認識を問題にする中国や韓国、さらには米国世論の動向(特に、ユダヤ人関係団体の影響力)を念頭に置けば、一刻も猶予はならないという政権の焦燥感は想像に難くない。野党は国会でこの問題を取り上げることを要求しているが、どうなるかはいまだ不明である。参院選での自民大勝からわずか10日ほどで起こった出来事である。 

報道された発言内容では元来の趣旨がはっきりせず、今のところ言いっ放しになっていることもあって、国会などで真意をさらに明らかにする必要があろう。また、これから憲法改正を俎上(そじょう)にのせようとする自民党にとっては、麻生発言との距離をどう置き、どう説明するのかが問われてしかるべきである。この問題は政権とそれを支える与党、特に自民党のガバナンスに関わる基本問題である。今後とも執拗(しつよう)にこの問題が言及されることは覚悟しなければなるまい。そう簡単に一件落着とはならないであろう。 

麻生氏の発言の趣旨は、改憲は喧噪(けんそう)の中で行ってもらいたくないというところにあったようだが、大臣の発言が喧噪に拍車をかける一因になるのではないか。改憲にナチスを絡めれば喧噪化するのは必至だからである。喧噪の中で改憲問題を取り扱わないようにするにはどうすればいいのかは、提案する側が考えるべき問題であるが、ナチスが飛び出してくるか何が飛び出してくるか分からないような提案では、喧噪に次ぐ喧噪しか予想できないであろう。 

麻生氏の発言が歴史認識という問題領域に属するかは別にして、これまでの自民党は歴史認識と改憲についてさまざまな見解を持つ政治家の集まりという印象を拭えなかった。しかし昨年の総選挙、今度の参院選を通して議員の構成が大きく変化した。改憲の自民党案について国民に理解を求めるに先立って必要なのは、歴史認識と改憲をめぐる党内意思の整理を実質的に着実に進めることだ。現憲法の枠内での改正なのか、枠組みそのものの見直しを試みるのか、その価値観をはっきりさせるべきであろう。改憲を国民に提案しようとするならば、改正目的の徹底した明確化は不可欠の条件であり、自民党は大議論を内部でする覚悟がなければならないし、自民党にそれをやり切る力量があるかは分からない。 

またもし、改憲論がいたずらに日本の国際的孤立を深め、無用な誤解を振りまく内容のものであれば、それを提起する政治的な条件が未整備だということで断念してもらうしかない。麻生発言は期せずして、日本の改憲論議を慎重に進めなければならないことを浮き彫りにしたというべきである。(東京大名誉教授) 


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2013818日 東京新聞朝刊 4面より


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