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2013年7月 9日 (火)

気になるニュース 137

 

「規制委は原発を再稼働するために、従来のルールを採用しないという判断をしたのではないか」・・・
引用書き起こし開始。 

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*住民犠牲の「再稼働」 新規制基準施行 


原発の新規制基準が8日、施行され、即座に10基の原発が再稼働申請された。福島原発事故の収束はおぼつかない。事故原因も判明していない。地元では、憤りが渦巻くばかりだ。さらに新基準には従来あった「立地評価」が削られていた。これは重大事故が起きた際に、住民の安全を考慮する評価だ。電力会社の経営最優先で、住民に犠牲を強いる原子力行政はなんら変わっていない。(佐藤圭、中山洋子) 


「人の手足をもいでおいて…」 

操業自粛が続く福島県いわき市の久之浜漁港。犬の散歩に訪れた漁師の男性(74)が東京電力への怒りに声を震わせた。 

岸壁にずらりと並ぶ漁船に人影はない。福島原発事故から2年半の間、地元漁師たちは汚染検査のための魚を捕ることを除いて、海に出ることができないでいる。 

海を奪われた漁師たちの疲労の色は濃い。 

県内では東日本大震災前には1173隻が登録されていたが、うち873隻が被災。流されたり、破損した船も多かったが、昨年末時点で758隻までに回復した。 

県北部では昨年から、放射性セシウムが検出されなくなったタコや貝などの16種に限り、出荷先を限定した試験操業が始まった。県南部のいわき市漁協でも、今年9月からの試験操業を目指して準備を進めていた。 


◆汚染水漏出疑いが浮上 

その矢先に原発の汚染水が海に漏出している可能性が浮上。敷地内の観測用井戸から高濃度の放射性トリチウムが見つかり、専用港内の海水の放射性トリチウム濃度も上昇していた。海際の井戸からはストロンチウムなどのベータ線を出す放射性物質が検出された。 

東電はいま、「汚染されていない」とする地下水の海洋投棄を漁業者に要望している。だが、いわき市漁協の新妻隆販売課長は「何とか前向きに取り組もうとしていたのに、出はなをくじかれるようなもの」と東電への不信感を隠さない。 

収束どころか、汚染拡大が懸念されているのに、東電は新潟県の柏崎刈羽原発の再稼働申請をするという。「東電はもうどうしようもない」という声を耳にした。 

NHKの連続ドラマにより、岩手県の海女漁が脚光を浴びた。いわき市も、原発事故前はアワビやウニ漁が盛んだったという。潜水漁をする男性の妻は「連ドラを見るたびに複雑な気持ちになる」と漏らした。 

そんな福島の被災地を置き去りにするかのように、新規制基準の施行により、原発に“安全”のお墨付きが与えられようとしている。 

別の男性漁師(58)も「もう、福島の事故なんかなかったことにしたいんでしょうよ」とやり切れない表情で話す。 

復興支援のガレキ処理事業などで月に数回、立ち寄るほかは、もうあまり漁港に来ることもなくなったという。「どうせ福島県産の魚なんか売れねえんだから。地元の人間が食わねえもんを、どうしたって売れる道理がねえ」とつぶやいた。 


◆削られた「立地評価」 

住民の安全と生命をないがしろにする姿勢は、今回の新規制基準にも露骨に表れている。 

「原子力規制委は、新基準で旧原子力安全委員会の立地審査指針を採用しなかった。この指針には、住民の被ばく線量の制限値が示されていたが、これを取っ払った」 

規制委の前進、旧原子力安全委の事務局技術参与を務めた滝谷紘一さん(70)はこう語る。 

立地審査指針では重大事故が起きた場合でも、周辺住民の全身被ばく線量(積算値)を250ミリシーベルト以下に抑えることが求められていた。その基準を満たすように原子炉と居住地域を離すことが立地評価の柱だった。 

この基準は近年、国際放射線防護委員会(ICRP)の基準などを基に、一層厳しい100ミリシーベルトで運用されていた。 

ただ、想定対象となる放射性物質は、燃料被覆管の破損などによって出るヨウ素や希ガス(キセノン、クリプトンなど)。炉心溶融や原子炉格納容器が壊れる過酷事故は想定しておらず、溶融によって拡散するセシウムは念頭にない。 

このため、福島の過酷事故後、規制委は従来の立地評価の代わりに、新基準での原子炉の性能目標として「フィルター付きベント(排気)で、セシウムの放出量を100テラベクレル以下(福島事故の100分の1程度)に抑える」という目安を示した。 

しかし、この計算ではベントで出されるヨウ素や希ガスは逆に無視されている。ヨウ素はフィルターである程度除去できるものの、希ガスは素通りだ。滝谷さんの調査によれば、福島原発事故の際、原発敷地から間近の周囲では、放射線量の実測最高値がセシウムのみならず、ヨウ素や希ガスも含めると、事故後1ヶ月で250ミリシーベルトを超過し、1年間では1190ミリシーベルトに達した。 

滝谷さんは「福島事故のような過酷事故を想定して立地評価をすると、100ミリシーベルトはもちろん、250ミリシーベルトの目標を満たすことも不可能になる。だから、規制委は原発を再稼働するために、従来のルールを採用しないという判断をしたのではないか」といぶかる。 


◆事故原因も不明なのに 

ちなみに旧安全委の主要指針のうち、新基準で外されたのは立地評価だけだ。滝谷さんは「原子炉等規制法に『位置、構造、設備が基準に適合すること』とあるにもかかわらず、新基準では、位置の適合性を判断する立地評価をしていない。規制法に反するのではないか」と指摘する。 

そもそも、福島事故の原因究明が不十分な段階での新基準の作成と運用には批判が多い。規制委が事故分析の検討会を立ち上げたのは5月初め。報告書がまとまるのは早くても年末だ。滝谷氏は「少なくとも規制委が事故分析を終えるまでは、新基準づくりはできないはずだ」と強調する。 

福島事故を契機に、原子炉の安全性にとどまらず、使用済み核燃料や核燃料サイクルの面からも「原発ゼロ」が迫られている。青森県六ケ所村の使用済み核燃料再処理工場や各原発の燃料プールの貯蔵容量の余地は少なく、再稼働しても早晩止めざるを得ない。 

滝谷さんは高速増殖原型炉「もんじゅ」の安全審査に携わった経験もあるという。そのもんじゅを含めた核燃料サイクルの破綻は明らかだ。 

滝谷さんは「原子力の仕事をしてきた一人として、福島事故では自責の念にかられている。福島事故のような過酷事故を起こした時点で、日本は原発を動かす資格を失った」と話す。 


[デスクメモ] 
パターナリズムという言葉がある。父権主義とか温情主義と訳されるが、典型例は「無知な患者のために医者が決めてやる」。再稼働の安心神話もこの一種である。世話焼き側は言うに及ばず、問題は受け入れる側にもある。低投票率、日米関係しかり。大きなお世話、と言い切る気概が試されている。(牧)


201379日 東京新聞:こちら特報部 
http://www.tokyo-np.co.jp/article/tokuho/list/CK2013070902000141.html

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