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2013年5月31日 (金)

気になるニュース 74

 

たまには違う新聞も。
文章のみ引用開始。

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*「除染現場」最前線 4つの事例に見る進捗と課題 


東日本大震災の復旧・復興事業で最大の特徴の一つは、福島第一原子力発電所事故への対処が必要であることだ。事故で拡散した放射性物質を含む土壌などを除去するのが除染で、土工事や路面洗浄工事の延長線上にある。復旧・復興を妨げる危険な放射線を生活圏から駆逐する目的で、国や市町村が2012年度から本格的に推進している。しかし、作業内容の特殊性に加え、現場内外の住民が抱く不安への対応など、従来の工事にはない難しさも伴う。「除染特別地域」に指定されている福島県富岡町と楢葉町、「除染実施区域」の栃木県那須塩原市と千葉県柏市で進捗する除染の様子を報告するとともに、今後の課題をまとめた。 


環境省は、東日本大震災に伴う福島第一原子力発電所の事故の影響で空間放射線量が毎時0.23マイクロシーベルト(年間1ミリシーベルト相当)以上となった地域の市町村を除染の対象としている。事業費は発注時には国費で賄うが、事故を起こした東京電力が「放射性物質汚染対処特措法」に基づいて負担する予定だ。 

福島県内で原発に近く線量が特に高いエリアは、「除染特別地域」として同省が直轄で除染を発注する。福島県のうち11市町村と、同地域を通る常磐自動車道の一部が対象だ。そのほかの「除染実施区域」(汚染状況重点調査地域)では、市町村が国の補助を受けて発注する。 

下の表では、201331日時点で除染特別地域の除染が着手済みかどうかを地域別に示した。同地域の除染は、土地、建物、道路、森林などを対象とする本格除染と、本格除染の拠点となる庁舎などで実施する先行除染に分かれる。環境省の計画では、本格除染は20143月末までに終わる予定だが、あと1年という段階で未着手の地域が多数ある。石原伸晃環境大臣は2013312日、この夏をめどに計画を見直すと述べた。 

■ばらつきが大きい除染の進捗 

除染で除去した土壌は、まずは作業者が現場に埋めるか、仮置き場に集める。除染特別地域は全て後者のパターンで、環境省が仮置き場を未確保のうちは除染を始められない。仮置き場の設置には近隣住民の理解が必要だ。 

上に示した二つのグラフには、除染実施区域で市町村が発注した除染の進捗状況を、対象となる場所の種類別にまとめた。ここでも進捗のばらつきは大きい。こうした事態を予期してか、除染の期間を環境省より長く計画している市町村もある。例えば福島県によると、同県の市町村は、2012年度から5カ年の計画とするところが多いという。 


【現場1:常磐富岡IC】 高線量の路面を高圧水で洗浄 

環境省は201331日、除染特別地域に属する福島県内の除染現場のうち、2カ所を報道関係者向けに公開した。その1カ所が常磐自動車道の常磐富岡インターチェンジ(IC)で、空間放射線量は同地域では比較的安全なレベルだ。 

JRいわき駅から環境省のチャーターしたバスで国道6号を北上し、除染特別地域に入った。住民の避難で震災直後のまま時間が止まったような被災建物、雑草が生い茂る線路など、荒廃した風景が広がっていた。 

環境省は同地域を除染することで空間放射線量を住民が生活できるレベルまで下げて、ほかの地域に比べて立ち遅れた復旧・復興を加速することを目指している。同地域を通る常磐自動車道の除染については、「住民の生活だけでなく物流の再建のためにも重要」(井上信治副大臣)と位置付けて力を注いでいる。 

常磐道で除染の対象となっているのは、南相馬IC(福島県南相馬市)と浪江IC(浪江町)の中間から、常磐富岡IC(富岡町)を経て富岡町の南端までだ。このうち常磐富岡IC以北は建設中の区間だった。 

常磐道の除染は、大成建設が202125万円の契約金額、201211月~136月の工期で受注した。 

■既存の路面洗浄装置を転用 

今回取材した常磐富岡ICでは、作業員が高圧水洗浄装置の「スピンジェット」を使用して、被災時に供用済みだった路面を除染していた。同社によると、路面の洗浄に使う装置をそのまま転用しているという。作業服も通常の路面洗浄にも使うものだ。 

ただし、作業後は労働安全衛生法に基づく除染電離則などに沿って作業服のスクリーニング(汚染検査)を実施し、汚染度が高い場合は廃棄する。回収した汚染水は、凝集剤で汚染土を抽出して浄化したうえで廃棄しているという。 

環境省によると路面付近の空間線量は作業前の時点で毎時2.4マイクロシーベルト、作業後で同1.4マイクロシーベルト。作業前の数値は東京都内の数十倍に相当するが、上の図に示したように常磐道の除染対象区間の中では最も低いレベルだ。 

■高線量区間の除染には限界も 

環境省は201331日の記者会見で、常磐道の供用開始または再開時点の空間線量を毎時3.8マイクロシーベルト以下に、年間では20ミリシーベルト以下に下げる方針を示した。常磐富岡ICの路面の線量は除染前の段階で基準をクリアしていたわけだ。 

問題は双葉町や大熊町に位置する最も線量の高い区間だ。同省によると、毎時9.5マイクロシーベルトを超え、なかには約40マイクロシーベルトに上るところもある。福島第一原発に近接しているうえに未舗装の区間も含まれ、供用開始までのハードルは高い。 

同省は現在進行中の除染で、こうした区間の線量をまずは毎時9.5マイクロシーベルト以下にすることを目指している。供用開始の段階でどのようにして3.8以下にするかは、「今後の課題」だとした。 


【現場2:楢葉町】 除去した土壌を減容化して保管 

環境省は除染特別地域で市町村単位の本格除染を発注している。対象となるのは、住宅や住宅から半径20m以内にある道路、森林など。福島県楢葉町の本格除染は、前田建設工業・鴻池組・大日本土木JV1881600万円の契約金額、20127月~20133月の工期で受注した。これは1期工事で、2期目の入札でも同じJVが落札した。 

同町の取材で訪ねたのは大谷地区の除去土壌の仮置き場だ。かつて水田だったという敷地に黒い土のう袋がずらりと並ぶ。環境省によると、除去土壌の入った袋は内側に配置し、表面を通常の土が入った袋で覆っている。安全性を高める効果を期待できる一方で、仮置き場に収容できる除去土壌の量はその分だけ減ってしまう。 

除去土壌は土砂ばかりでなく、木の枝や草、路面の除染などで生じる汚染水から抽出した汚泥も含まれる。除染の実務者は仮置き場をパンクさせないように除去土壌の減容化に取り組むことが求められている。 

前田建設工業JVは仮置き場に設置した白い大きなテントの中で、既存のがれき処理の技術を転用して木の枝や草を破砕、圧縮していた。体積を当初の約23%に縮小する効果がある。 

ただ、木の枝などを運搬するトラッククレーンを含めて5台の建機などを狭いテント内で動かすため、作業には危険も伴う。2013322日にはテント内でトラッククレーンを誘導していた作業員が、バックホーにひかれて死亡した。 

■中間貯蔵施設の設置が課題 

環境省は、除染特別地域など福島県内の除染で生じる除去土壌を、同県内に設ける中間貯蔵施設に収容する予定だ。施設の立地場所を2012年度中に選定し、20151月をめどに施設の供用開始を目指している。後に最終処分場も設置し、中間貯蔵施設の供用開始から30年以内に除去土壌の最終処分を実施する方針だ。 

ただ、現実には20133月下旬時点でも中間貯蔵施設の場所は未定のままだ。このため仮置き場での保管が長期化するのではないかという不安が被災地の住民の間に広がれば、仮置き場の確保も難しさを増す。 

除染特別地域の除染は仮置き場の確保が前提なので、未発注の市町村もまだ多い。事業の大幅な進捗には中間貯蔵施設の問題の解決が待たれる。 


【現場3:那須塩原市】 低線量の宅地で住民説明に注力 

空間放射線量が比較的低い地域の除染の現場は、除染特別地域とは様相が異なる。高い線量や仮置き場の確保などで困らずに済む一方で、日常生活を続けている住民への対応が重要になる。東洋建設は栃木県那須塩原市の住宅地などの除染で、住民説明に重点を置く体制を整えた。 

栃木県では北部から西部にかけての地域が、空間放射線量が比較的高いとされ、除染実施区域の指定を受けている。那須塩原市は同区域の市町村の一例だ。 

同市が市役所のWebサイトで公表している空間線量を見ると、例えば20132月に市役所付近の信号機で測定した数値は毎時0.3マイクロシーベルトだった。除染特別地域と比べればケタが一つ少ないものの、環境省が除染実施区域の基準とする0.23を上回っている。だが、住宅地では多くの市民が日常生活を送っている。 

■説明資格を作業員のベストの色で示す 

同市では東洋建設が住宅地と公共施設の各一部を対象に、292110万円の契約金額、201211月~133月の工期で除染を受注した。 

東洋建設は除染に参入するに当たり、当初は得意とする海洋土木工事の技術を生かせる池沼や河川の除染を主に手掛ける考えだった。陸上の除染に参入したのは、水域の除染が今のところ環境省の補助の対象外で、本格的に発注する市町村がないのに加えて、同市で土地勘があったからだ。民間建築工事の受注実績が豊富だった。 

「住宅地の除染では住民への説明が重要になる。過去に別の工事で多くの住民と接したことがある地域なら、除染の説明もしやすいはずだ」(土木事業本部の田中啓之土木企画部長)。同社はこうした考えで入札に参加し、受注した。 

住宅地の除染は住民があらかじめ作業内容に納得して除染実施同意書を市に提出したところだけを対象にしている。それでも作業の性質上、不安や疑問を感じて現場の社員や作業員に質問してくる可能性がある。 

同社は住民の質問に対応するために、除染現場に出る自社の社員には青いベストを、作業員のなかで作業班の班長以上の者には緑色のベストを着せた。住民から除染に関して何を聞かれても答えられるように両者を教育した。住民説明ができない一般作業員には黄色のベストを着用させて、班長以上の者と区別した。ベストの色の意味は住民にも作業開始前に知らせている。 

さらに、現場作業所で住民対応に関して班長を教育する専任の社員を決めた。万一、班長が難しい質問をぶつけられて対応しきれなくなった場合には、自ら住民説明に乗り出す役割も負っている。 

その社員である伊藤靖氏に、住民への対応で印象的だった経験を聞いてみた。「作業の開始日が一旦決まったのに、近隣の宅地でまだ除染が始まっていないので自分も待ちたいと言い出した人がいた。地域の人間関係を尊重して受け入れた」。 

■安全対策に納得してもらう 

那須塩原市のような低線量の地域で行う除染の特徴の一つは、除去した土壌を仮置き場へ持っていかず、現地に埋める場合があることだ。最終処分場ができるまでの仮の保管だが、長期化する可能性がある。取材で訪ねた店舗付き住宅でも、敷地の隅に埋めることが決まっていた。 

「除去土壌は危なそうだからよそへ持っていってくれと言う住民に、安全対策を説明して納得してもらうのも、社員や班長の務めだ」と伊藤氏は話す。 


【現場4:柏市】 樹木回りの除染は造園の技で

千葉県柏市では地元の造園会社が児童公園の除染を手掛けていた。那須塩原市と同様、多くの住民が暮らす住宅街の中での作業で、公園も除染後直ちに供用が再開される。作業の基本はスコップなどによる手作業だ。木の根元の表土などを丹念に剥ぎ取っていた。

20132月下旬に訪ねた柏市南部の住宅街は、少なくとも表向きには日常生活が戻っているように見えた。

住宅街の中にある児童公園の野沢第二公園(柏市南逆井)では緑建、高柳南公園(柏市高柳)では染谷園芸と、どちらも市内の造園会社が除染の作業中だった。作業員の手作業で土壌の表層部分を剥ぎ取り、バックホーで砂場の砂を入れ替えていた。

柏市が公表している線量のデータによると、例えば野沢第二公園では最も高い箇所で毎時0.352マイクロシーベルトあった線量が、除染後は全て0.1マイクロシーベルト未満に下がった。

緑建の溝口幸夫取締役事業部長は除染について、「木の根元は線量が高くなりやすく、作業が特に難しい」と話す。木を根こそぎ抜けば線量の高い土を一気に剥ぎ取れるが、作業後すぐに供用を再開する公園でそれはできないので、手作業で丹念に剥ぎ取っているという。

溝口取締役によると、同社がこれまでに受注した公園の除染は20件を超える。作業員を増やそうと考えたこともあるが、除染特有の手続きや法規などをいちいち教え込む手間が掛かるため、前からいる作業員だけでやっているという。 (日経コンストラクション 安藤剛)

[日経コンストラクション2013年4月8日号の記事を基に再構成]
[]この記事は、20133月末時点までの情報に基づいています。



2013531日 日本経済新聞 ニュースの深層
http://www.nikkei.com/article/DGXNASFK20022_Q3A520C1000000/




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