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2013年5月24日 (金)

気になるニュース 62

 

引用書き起こし開始。

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*「3分の2」 憲法海外事情(3) ドイツ・改憲59 


◆独裁教訓 理念は不変

改憲は裁判所の判決がもたらした。

ドイツ国会は2002年、憲法に当たるドイツ基本法に「国は動物を保護する」という規定を追加した。議論は東西ドイツ統一後に始まり、1994年と98年に革新勢力が改憲を提案。いずれも議会の「3分の2」以上の賛成を得られず、否決されていた。

ところが、裁判で状況が一転した。ドイツは食肉処理に麻酔を使って動物が苦しまないようにしているが、連邦憲法裁は宗教上の理由で麻酔を使えないイスラム教徒の訴えを認定。反発する世論に保守政党が同調し、改憲案は一気に「3分の2」を獲得した。

動物保護を明記した憲法は先進国でも異例だが、ドイツ基本法にはさらに別の特徴がある。他国が一般的な法律で定めている事柄を詳しく盛り込み、制度や手続きの変更に改憲が連動する。

公布から64年間での改憲回数は59回。欧州連合(EU)との制度の擦り合わせ、連邦政府と州政府の役割の変更など事務的な内容がほとんどで、政治の大きな争点にはなっていない。たとえば107月に行われた改憲は、求職者に対する中央と地方の補償負担割合の見直しだった。

改憲の発議要件を衆参両院の「3分の2」以上の賛成から「過半数」に緩めようとする日本の議論では、ドイツの改憲回数の多さが取り上げられている。しかし、ベルリン自由大の法学部教授マルクス・ハインツェン(52)は「ドイツ基本法は規定が細かく、日本の憲法とは性格が異なる」と指摘する。

西部ラインラント・プファルツ州政府の環境大臣ウルリケ・ヘフケン(58)は、90年連合・緑の党所属の連邦議会議員を11年まで務めた。動物保護の改憲では「3分の2」を超える難しさを味わったが、「ドイツにはナチスの歴史がある。その反省に立てば、ハードルは下げるべきではない」と言い切る。

ドイツ国会は80年前、ナチスの総統ヒトラーに権力を集中させる全権委任法を議決。ヒトラーは新しい法の制定に必要な「3分の2」以上の賛成を得るため、反対する議員を弾圧して採決に参加できないようにした。

独裁が行き着いた第2次大戦で日本とともに敗戦したドイツは、その教訓から基本法に「不変」の条文を設けた。「人間の尊厳は不可侵」とうたう1条と、民主国家の原則を定めた20条。制度変更に伴う改憲を繰り返す一方で、この2つの条文だけは未来にわたって変わらない。

「どんな社会でも、一時的に間違った考えが広がってしまうことはあり得る」。保守政党、キリスト教民主同盟の連邦議会議員ヘルムート・ブラント(62)は歴史を踏まえて指摘する。敗戦から68年。日本の政権が改憲ルールの緩和を目指す一方で、ドイツ基本法は「3分の2」でも変えられない国の理念を保障している。=おわり、文中敬称略(ベルリン・宮本隆彦、写真も)


[ドイツ基本法の改正] 

日本の衆院に当たる連邦議会と全16州政府の代表でつくる連邦参議院の双方で、議員の3分の2以上の賛成が必要。改憲回数は19495月の公布から59回。政治手続き上の改憲が主で、戦争や大災害など非常事態への対処を目的にした68年などを除いて市民の多くが改憲の中身を知らない。


2013524日 東京新聞朝刊より  

 

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